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約束
「アストラル、消えろおおおお!!!」







「消えるとか、言うなよ」
屋根の上で満天の星空を見上げながら、遊馬が小さな声でつぶやいた言葉。まさかそんなことを言われるとは考えもしていなかったアストラルは静かに驚き、どう返したものか迷っていた。
消えてほしいと遊馬が散々わめき立てていた時のことを思い出しくすりと笑えば、不機嫌そうな顔でこちらを見て来る。そんな姿に愛しさを覚えるようになった自分も、あの頃と比べると相当柔らかくなったのかもしれない。

「シリアルな雰囲気が台なしじゃんか」
「それを言うならシリアスだ」
「う、うるせー!」
そう言って背を向けた遊馬の頬に涙がつたうのが見えたような気がして、アストラルは慌ててその肩を掴もうとした、がいつも通りすり抜けるだけだ。何かに触れようとしてすり抜ける度に感じる虚しさ。自分がここにいるべき存在ではないということを改めて思い知らされているような、そんな気になる。殊更遊馬に触れようとしたとき、そんな感情は大きくなった。遊馬という一番近しい存在にさえ、触れることができない。

「俺さ、ずっとお前と一緒にいたいんだ」
きっと、今以外のときに聞けたなら最高に嬉しい台詞だろう。アストラルは知ってしまった。自分と遊馬の間にある、埋めようのない溝を。住んでいる世界が違うと再確認してしまった。遊馬はきっと、そんなことは関係ないと言って笑い飛ばすだろう。

「だから、そんなあっさり消えるなんて、言うなよ」
「…わかった。私は消えない」

消えたくない。

「ずっと君のそばにいよう」

ずっと君のそばにいたい。

「約束だからな」
「ああ、約束だ」
「お、流れ星!」



君と切り抜けたいくつもの戦いを、君が耐え抜いたいくつもの痛みを、君が与えたいくつもの希望を、私は忘れない。決して、忘れない。
あの時見た流れ星に願っていれば、なんて。私らしくないな。
さあ。君に全てを託そう、遊馬。


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